SUPER FORMULA 2025 Rd.6-7 FUJISPEEDWAY|王者・坪井が得意の富士攻略でポイントリーダーに浮上。
7月18〜20日、静岡県・富士スピードウェイにて全日本スーパーフォーミュラ選手権第6・7戦が開催された。今大会では2戦ぶりに1大会2レース制が採用され、19日(土)に第6戦、20日(日)に第7戦が行われた。
シーズン折り返しとなる今大会は「スーパーフォーミュラ 夏祭り2025」と題され、多彩なイベントが催された。代名詞とも言える打ち上げ花火や、多数の出店、ブース、グルメが楽しめる縁日など、暑い夏にふさわしい催しが盛りだくさんであった。また、ファン層の拡大を受け、現地で応援グッズを作成できる「推し活ブース」なども登場し、レース以外の楽しみも満載で、老若男女問わず楽しめる大会となった。
第7戦終了後には、ホームストレート上で「AFTER RACE GRID PARTY」が開催された。フードやドリンクの販売に加え、トークショーやドライバー・大湯都史樹によるDJパフォーマンスもあり、レース終了後も多くの来場者で賑わいを見せた。5万3400名もの観客が訪れ、「スーパーフォーミュラ 夏祭り2025」は大盛況となった。
また、今回の大会ではスーパーフォーミュラに加えて、女性ドライバーによるKYOJO CUP、ポルシェ・カレラカップ・ジャパン(PCCJ)の計3カテゴリーが集結。いずれも2レース制で進行し、過密スケジュールの中で熱戦が繰り広げられた。スーパーフォーミュラでは1大会2レース制により、18日(金)のフリー走行が開幕の走り始めとなった。
この日は終日曇天だったが、午後には路面温度が50度に達し、本番さながらのドライコンディションでの走行となった。午後には全体的にタイムが上昇し、上位18台が1秒以内にひしめく接戦に。その中で最速タイムをマークしたのは、65号車・イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)であった。
前日のフリー走行でタイム合戦が繰り広げられたスーパーフォーミュラは、第6戦が開催される19日(土)を迎えた。この日は朝から雲ひとつない青空が広がり、富士山もくっきりと望める絶好のレース日和となった。朝9時10分からは予選が行われ、Q1のグループAでは1号車・坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、グループBでは岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が速さを見せた。
続く予選Q2では、野尻智紀(TEAM MUGEN)が先陣を切って最速タイムを記録。Q1トップだった1号車・坪井もセクター1・2で全体ベストを記録し、タイムを塗り替えるかに思われたが、わずか0.021秒及ばず、悔しさを滲ませた。最終的に16号車・野尻が通算23回目のポールポジションを獲得し、歴代最多記録を更新した。
15時15分に始まった決勝では、前戦オートポリスからマシンのバランスが改善されたという16号車・野尻が、予選後に「坪井選手が2番手にいるので、まずはスタートを制さないと勝機はない」と語っていたとおり、オープニングラップでトップに立った。しかし、2番手スタートの1号車・坪井はスタートでやや加速を欠いたものの、2周目のホームストレートで16号車・野尻を華麗にオーバーテイク。
3番手には8号車・福住仁嶺(Kids com Team KCMG)、4番手には15号車・岩佐が続き、2番手に後退した16号車・野尻は油断の許されない状況が続いた。36周のレースで、10周目には早めにピット作業を行うチームが現れ、上位陣で最初に動いたのは11周目にピットインした野尻だった。対する坪井は序盤から高いペースを保ち、ロングスティントを選択して23周目にピットイン。異なる戦略で勝負に出た。
ピット作業を終えた坪井は野尻の後方でレースに復帰。二人の接戦は終盤にもつれ込むかと思われたが、25周目に坪井がオーバーテイクを成功させ、早々に首位を奪還。その後も良好なレースペースを活かして野尻を引き離し、最終的には6.7秒差をつけて連勝を達成した。
また、この日はKYOJO CUPのスプリントレースでも、坪井の妻・斎藤愛未がポール・トゥ・ウィンを飾り、富士スピードウェイで2度目となる夫婦同日優勝を果たした。坪井はレース後、「彼女が今日のレースでポール・トゥ・ウィンしていますし、彼女の結果がいいと僕もいい結果が出て、良いブーストになっています。お互い刺激し合いながら良いレースができています」と語り、喜びを分かち合った。
この結果、開幕4戦で圧倒的な強さを見せていたDOCOMO TEAM DANDELION RACINGはチームランキングでは首位を維持したものの、オートポリス戦に続いてその牙城が崩れ、ドライバーズランキングでは坪井が首位に浮上した。優勝こそ逃したものの、16号車・野尻は粘り強く走り2位を獲得。3位争いでは8号車・福住と15号車・岩佐が接戦を展開し、終盤に岩佐が前に出た。週末を通じて好感触を得られなかったという岩佐だったが、前戦の雪辱を果たす形で表彰台を獲得した。
また、この第6戦でトップフォーミュラ通算100戦目を迎えた14号車・大嶋和也(docomo business ROOKIE)は6位でフィニッシュ。レース後には会見が行われ、今季限りでスーパーフォーミュラから退くことを表明。オーナーの豊田章男も祝福に駆けつけ、これまでのレースを振り返りながら、次のように胸の内を明かした。
「チャンスを与えてくれたオーナーに感謝しています。何度もスーパーフォーミュラを降りようと思う場面はありましたが、今辞めたら一生後悔すると思い、わがままを言ってチームオーナーに続けさせてほしいとお願いしました。本当に辛い思い出ばかりでしたが、支えてくれたチームに感謝しています。今日も今の僕たちにできる最高のレースができて、ホッとしています。わがままを言ってもう1年走って、本当によかったです」
そして一夜明けた7月20日(日)、第7戦が開催された。この日も朝から好天に恵まれ、10時10分より予選Q1がスタート。前日、「もちろん決勝も大事ですが、そろそろ野尻選手の予選記録を止めて、ポールポジションを獲りたいです」と語っていた1号車・坪井は、Q1こそ5番手だったものの、Q2では最速タイムをマークし、前日の雪辱を果たして今季初のポールポジションを獲得した。
2番手には、直近2戦で苦戦していた6号車・太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が復調の兆しを見せた。3番手には64号車・佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)が入り、ホンダ陣営の2台が続く形に。前日ポールだった16号車・野尻は7番手につけていたが、最後のアタックで走路外走行があり、ベストタイムが抹消されて12番手に後退した。
第7戦決勝レースは当初15時15分にスタートする予定だったが、トランスポンダー(送信・応答機)のバッテリー交換作業に時間を要し、スタート進行が遅延。約45分遅れて16時にフォーメーションラップが開始された。スタート直後、1コーナーでは6号車・太田がトップに立つも、1号車・坪井が最終セクションで再び先行し、オープニングラップを制した。
第6戦よりも周回数が多かった第7戦では、早くも2周目にピットインを敢行するチームが現れた。上位勢では、前日同様に15号車・岩佐が7周目と早い段階でピットイン。中盤の19周目にはセーフティカー(SC)が導入され、まだ作業を行っていなかった上位勢が一斉にピットへ。この混乱の中で、すでにピットを終えていた15号車・岩佐がわずかに坪井の前に出て、アンダーカットに成功した。
25周目にレースは再開され、終盤戦へ突入。SC解除直後、3番手を走っていた6号車・太田が1号車・坪井に猛然と襲いかかる。ここでは順位の変動はなかったが、サイド・バイ・サイドの激しい攻防が続いた。そして31周目のホームストレートで、太田がオーバーテイクシステムの残量を活用して坪井を攻略し、2番手に浮上。
その翌周、太田は先頭の15号車・岩佐にも急接近し、33周目の1コーナーでトップを奪取。そのままラストスパートに入り、岩佐は徐々に離されていった。最終的に太田は7秒以上のリードを築いてフィニッシュし、今季6勝目を挙げた。2位には岩佐が入り、スーパーフォーミュラ初優勝こそならなかったものの、2戦連続の表彰台を獲得した。
3位争いは、ピット戦略でアンダーカットを成功させた7号車・小林可夢偉(Kids com Team KCMG)と1号車・坪井によって繰り広げられた。終盤、可夢偉は徐々に差を詰め、最終ラップの最終コーナーでオーバーテイクシステムを駆使して猛追。しかし、オーバーテイクシステムの残量が尽きていた坪井が粘り強くこれを振り切り、3位表彰台を守り切った。
ここ2戦は苦戦が続き、予選ではコースオフによるベストタイム抹消も経験した坪井だったが、確実にリカバリーを果たし、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの強さを再び印象づけた。6号車・太田はレース後、「坪井選手の連勝をここで僕が止めなければと思っていました。ガチンコ勝負で競り勝てて、僕にとっても嬉しい勝利でした」と喜びを語った。
昨年の富士スピードウェイでは4連勝を記録し、“富士マイスター”と称される坪井は今回、連勝こそ途絶えたが表彰台に上がり、ポイントリーダーの座を死守。「この結果は十分。やり切った感があります」と満足げに語った。なお、坪井は次戦を前に、8月6〜7日に富士スピードウェイで実施されるハースF1のテストに参加予定である。
F1マシンへの初挑戦となるが、「F1に乗れる機会がある以上、スーパーフォーミュラの勝者として誇りを持って挑みたい」と意気込みを語っていた。
F1に次ぐスピードを誇り、海外からも注目を集めるスーパーフォーミュラ。その舞台で戦うドライバーたちが、近い将来、世界を舞台に活躍する姿を見ることができるかもしれない。そうした期待もあり、今後ますます注目が高まっていきそうだ。第8戦は8月9〜10日に宮城県・スポーツランドSUGOにて、1大会1レース制で開催され、いよいよ終盤戦に突入する。
写真=南 博幸 文=三家香奈子