SUPER FORMULA 2025 Rd.5 AUTOPOLIS|王者、坪井翔が今季初優勝!岩佐歩夢はまたも初勝利が目前で途絶える。
5月17日〜18日、大分県オートポリスにて、全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦・九州大会が開催された。開幕から鈴鹿(第1・2戦)、もてぎ(第3・4戦)と1大会2レース制が続いていたが、第5戦は久々に通常通りの1大会1レース形式での実施となった。
通常であれば、土曜午前に90分のフリー走行、午後に公式予選、日曜に30分のフリー走行(2回目)を経て、午後に決勝レースが行われるスケジュールとなる。ところが、予選日前日の16日(金)夕方から雨に見舞われ、翌17日(土)も朝から雨と強風、さらには濃霧により天候が悪化。午後には一時的に小降りとなったものの回復には至らず、この日のすべてのセッションが中止となった。
これによりスケジュールはワンデー開催に変更され、18日(日)の9時40分〜10時20分にかけて、セッション時間を10分延長したうえでの計時予選が実施されることとなった。この日もオートポリスは厚い雲に覆われ、路面にはところどころ濡れた部分が残るコンディションのもとで走行がスタートした。
セッション開始と同時に全車が一斉にコースイン。序盤から連続周回を重ねるチームが多く見られ、中盤には徐々にペースアップする展開となった。15号車・岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、8号車・福住仁嶺(Kids com Team KCMG)らが次々とトップタイムを更新していくなか、16号車・野尻智紀(TEAM MUGEN)がいち早く1分26秒台に突入し、セッションは終盤へ。
トップ3は16号車・野尻、8号車・福住、そして1号車・坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)。残り時間がノックアウト予選のQ2と同様の7分程度となったところで、多くのマシンがピットに戻り、ニュータイヤに履き替えた。そして残り5分を切ると、再び各車が一斉にコースインし、アタック合戦が始まった。
しかし、アタック中に暫定トップを走っていた16号車・野尻が1コーナーでコースオフ。フロントウイングを破損してしまう。さらに37号車・サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)がコース上にマシンを止めたことで黄旗が提示され、多くのマシンがベストラップ更新のチャンスを失ったまま、セッションは終了となった。
セッション中盤にトップタイムを叩き出していた16号車・野尻が、そのまま今季3度目、通算22度目のポールポジションを獲得。2番手に3号車・山下健太(KONDO RACING)、3番手に7号車・小林可夢偉(Kids com Team KCMG)が続いた。
午後は時おり小雨が降ったものの、決勝はドライコンディションで開催。20分間のウォームアップ走行を経て、14時42分にフォーメーションラップが開始され、41周のレースがスタートした。好スタートを決めたのはポールポジションの16号車・野尻だったが、1号車・坪井と15号車・岩佐が序盤から大きくポジションを上げて後方に迫った。
2周目以降、早々にピット作業を行うチームも現れた。作業を終えた組の中では、5号車・牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が実質トップを走行。8周終了時に福住仁嶺(Kids com Team KCMG)がタイヤ交換を済ませて”裏のトップ”でコースへ戻るが、7号車・小林可夢偉が5号車・牧野を次々と攻略し、裏の1位に浮上した。
タイヤ交換をまだ行っていない上位陣では、16号車・野尻が1号車・坪井に対して約3秒のリードを保ち、表のトップをキープ。一方、その後方を走る15号車・岩佐は、上位勢の中では早めの14周終了時にピットイン。復帰後はファステストラップを叩き出しながら、トップ2にじわじわと迫っていった。
ト作業から勢いそのままに、坪井が2コーナーでオーバーテイク。トップを奪還する。その直後、15号車・岩佐が4コーナーで野尻を、さらに100Rで坪井を捉えて、ついに首位に躍り出た。
19周目、4号車・ザック・オサリバン(KONDO RACING)が単独スピンでコースオフ。これにより車両回収のため、セーフティカー(SC)が導入される。タイヤ交換をまだ済ませていなかった3号車・山下や64号車・佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)ら4台はすかさずピットへ。素早い判断で復帰した山下は5番手につけ、その後も着実に順位を上げていった。
レース終盤、トップを快走していた15号車・岩佐が突如スローダウン。無線では「タイヤが外れた!」との声もあり、マシントラブルが発生したとみられる。スーパーフォーミュラでの悲願の初優勝が目前に迫っていただけに、またしても不運に見舞われる形となった。
岩佐のスローダウンによりトップへ浮上したのは、1号車・坪井。2番手・16号車の野尻とは1秒以内の接戦となったが、終盤にかけてじわじわと差を広げ、そのままトップでチェッカー。今季初勝利をつかみ取った。野尻は最終ラップで猛追を見せるも届かず2位。3位には3号車・山下が入り、今季初の表彰台を獲得した。
開幕4戦で圧倒的な強さを見せていたDOCOMO TEAM DANDELION RACINGだが、この第5戦ではやや低調な結果に。5号車・牧野は6位、6号車・太田格之進は13位でフィニッシュ。それでも牧野はランキングで首位に立ち、ポイントリーダーとなった。
天候不良によりワンデー開催となった波乱の第5戦。ランキングにも変動が見られ、次戦以降の展開がますます注目される。6月6〜7日には、静岡県・富士スピードウェイにて第6・7戦に向けた公式テストが実施予定。その本戦は、7月18〜20日に1大会2レース制で開催される。果たして、次なる主役は誰か。注目のバトルに期待したい。
写真=南 博幸 文=三家香奈子