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2025 SUPER FORMULA Rd.10-12 SUZUKA|最終ラウンドは異例の3レース開催でタイトル争いが激化。岩佐歩夢が週末に天国と地獄を経験し、タイトル初戴冠。

11月21日〜22日、三重県・鈴鹿サーキットにて全日本スーパーフォーミュラ選手権第10・11・12戦が開催された。前大会の10月12日(日)に富士スピードウェイで開催される予定だった第10戦の決勝レースは、直前の濃霧によりディレイを繰り返し、天候の回復が見込めないためにレースの中止が発表された。そのため急きょ代替レースが追加で組み込まれたことを受け、1大会2レース制から異例の1大会3レース制が設けられた。

シリーズチャンピオンが決まる鈴鹿大会は11月21日(木)に午前と午後にそれぞれ1度の占有走行を経て、22日(土)には8時から8時42分まで第11戦のグリッドを決める予選、そして休む間もなく10時05分から10時47分までは第12戦のグリッドを決める予選と、午前のうちに立て続けに予選が実施された。この日は14時30分から第11戦の決勝レースが行われ、1日の締めくくりとなった。

明くる23日(日)は2レースが開催され、延期となっていた第10戦の決勝レースが19周で行われた。この決勝レースにおけるグリッドは、前回の富士大会にて行われた第10戦の予選結果がそのまま反映された。そして、シーズン最終戦となる第12戦が14時30分から実施されるという過酷なスケジュールが組まれていた。

21日(金)の占有走行では鈴鹿サーキットをホームとするホンダ陣営が速さを見せ、なかでもPONOS NAKAJIMA RACINGがトップ3に2台食い込む好調ぶりを発揮し、新たな刺客が登場するかとも思われたが、予選ではTEAM MUGENが並々ならぬ速さを見せた。22日(土)に立て続けに行われた第11戦および第12戦の予選では、どちらも15号車岩佐歩夢がポールポジションを獲得して6ポイントを荒稼ぎ。2番手には16号車野尻智紀が入り、ワン・ツーを独占してTEAM MUGENは予選だけで10ポイントを加算した。3番手は第11戦がイゴール・オオムラ・フラガ、第12戦が佐藤蓮と、PONOS NAKAJIMA RACINGの2台が分け合う形となった。

続く同日14時30分からスタートした第12戦の決勝レースは、まさかの展開が巻き起こる。1周のフォーメーションラップ中に28号車小高一斗(KDDI TGMGP TGR-DC)がスロットル破損によるトラブルで130Rにてマシンを止めてしまう。それにより仕切り直しとなり、1周減算され26周で争われることになった。2周のフォーメーションラップを経てスタートが切られると、16号車野尻が好調な蹴り出しを見せてトップを奪う。すると、逆バンクで2番手につけていた15号車岩佐が65号車イゴールと接触し、痛恨のクラッシュ。ここで戦線離脱となり、ノーポイントに終わるという痛手を負ってしまう。

16号車野尻を先頭にした隊列は、2度目のSC(セーフティカー)が出たタイミングがちょうどピットウィンドウの10周目であったことから、全車が一斉にピットインした。トップの16号車野尻、2番手の65号車イゴール以降は順位が入れ替わり、3番手には5号車牧野が浮上し、1号車坪井を抑え込み順位を守り切る。中盤頃には、スタートで大きく順位を落としていた6号車太田が猛攻を続け、凄まじい勢いでオーバーテイクショーを披露して順位を回復。18周目には4番手1号車坪井の真後ろにまで迫っていた。

その後も6号車太田は果敢に1号車坪井を攻め立てるが、OTS(オーバーテイクシステム)の残量がわずかに足りず、仕留めるまでには至らなかった。その間にトップを快走する16号車野尻は後方との差を広げ、先頭を守り切ってチェッカーを受け、今季初優勝を手にした。2位には65号車イゴール、3位には5号車牧野というトップ3になった。この結果、ポイントリーダーの1号車坪井は112.5点、2位の15号車岩佐と6号車太田が90点で並ぶことに。また5号車牧野も92点、16号車野尻も87.5点と、タイトル争いは僅差となり、より熾烈な争いとなることが予想された。

また、この時点で2つのタイトル争いに決着がついた。2位でチェッカーを受けた65号車イゴールがルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝き、第11戦終了時点で計172点を稼いだDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが2年連続でチームタイトルを確実なものとした。

そして今季ラストレースが開催された23日(日)、まずは朝9時50分に第10戦の幕が開けた。19周で争われたレースは、ポールスタートの5号車牧野が最高の蹴り出しを見せたが、1コーナーの飛び込みで2番手スタートの65号車イゴールがアウト側から一気に抜き去り首位を奪い、すぐさまOTSを使用して逃げ切り体制を作る。5号車牧野はOTSを温存して2番手を守るが、前とは2秒ほどの差が開いていた。3番手に太田、4番手に岩佐、5番手に野尻、6番手に佐藤とホンダ陣営が続く後方で、1号車坪井は7番手を死守する。

レース中は上位における順位変動はなく、OTS勝負となったが、序盤にリードを広げた65号車イゴールが最後まで逃げ切り、ルーキーイヤーにして初勝利を挙げた。2位は5号車牧野、3位は6号車太田が入り、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGのふたりが同点でランキング2位に浮上した。ポイントリーダーの1号車坪井とは9.5点差となった。また15号車岩佐はリタイアが響き4位に転落し、12.5点差に開いた。

午後にはいよいよ最終決戦の幕が開けた。15号車岩佐が首位を守り1コーナーに入っていくが、後方では初優勝を挙げたフラガ選手が野尻選手を交わして2番手に。5号車牧野と6号車太田も続く傍ら、1号車坪井は1〜2コーナーにかけてやや膨らむ形で9番手にポジションを落とす。この最終戦では1周目からピットインすることができるため、上位勢では16号車野尻を含む3台がオープニングラップを経てピットインを敢行。2周目には1号車坪井も動きを見せ、16号車野尻選手の前でコースに復帰することに成功し、後方をブロックして順位を死守した。

そこに応戦した6号車太田選手は1号車坪井の前に入り、後方を引き離す。その動きを見ていたTEAM MUGENは7周目に首位を走る岩佐選手のピット作業を済ませ、太田選手の前で合流させる。1号車坪井選手は4番手までドロップし、ホンダ艦隊に塞がれる形に。さらに追い打ちをかけるように10周目の最終セクターで2台が接触しマシンを止めるアクシデントが発生し、セーフティカー(SC)が導入されると、ピット作業を終えていない10台が一気にピットへとなだれ込む。ここで展開が左右されることとなり、自身初優勝を狙う64号車佐藤は3番手、チャンピオンの可能性を残す5号車牧野は4番手でコースに復帰した。

14周を終えてリスタートが切られると、さらにレースは動き、65号車フラガが5号車牧野を1コーナーでパスし、その後前を走る64号車佐藤も6号車太田を捉え、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGのふたりはチャンピオンから遠ざかることになった。その後方では、ギリギリでタイトルの可能性を残していた1号車坪井も39号車阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)にパスされ、ひとつポジションを下げたことで王座獲得の権利は15号車岩佐に移行。15号車岩佐はファイナルラップでオーバーテイクシステムを作動させてラストスパートをかけ、見事首位を守り切ってチェッカーを受けて今季2勝目をマーク。参戦2年目にして大逆転で初のチャンピオンを手にした。

岩佐選手はレース後の会見で「勝てない時期が前半戦で続いて、やっと第8戦SUGOで勝てましたが、結果的にシーズン2勝でチャンピオンということを考えると、レースをフィニッシュした時にしっかり表彰台にいたことは大きかったです。今後は日本一という肩書きをしっかりと活かせるような進み方をしていきたいです」と嬉しさを口にした。

レースの結果、2位には64号車佐藤が続きベストリザルトを獲得。3位には、終盤に「マシンの挙動がおかしい」と無線を入れチャタリングの症状を訴えていた6号車太田が、なんとか凌ぎ切って表彰台を獲得した。だが、タイトル争いには敗れる形となり、マシンを降りた後は終始悔しそうな表情と涙を見せる一面も見られた。また1号車坪井は8位でチェッカーを受け、2年連続でのスーパーGTとのダブルタイトル獲得は叶わなかった。

こうして、2025年シーズンのスーパーフォーミュラは全12戦を終えて幕を閉じた。12月10日(水)〜12日(金)には鈴鹿サーキットにてテストが行われ、国内外を問わず新たな刺客も出てきそうだ。年々白熱するスーパーフォーミュラだが、来シーズンはどのようなバトルが繰り広げられるだろうか。

写真=南 博幸 文=三家香奈子

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